cafē 水照玉 & hostel~多忙なスローライフ徒然

屋久島・永田のCafēとゲストハウス。ゆる~く菜食&マクロビオティック 営業案内と田舎暮らし・農・食・サスティナブル・教育その他雑多に。

秋山千葉の色

「楓蔦黄(ふうかつきなり)」

二十四節気七十二候のひとつ。読んで字の如く紅葉が山々を染めるころ。
空気は澄み乾燥して、朝や夜の、人恋しくなるような肌寒さが
冬の音無き足音を感じ始めるころ。

『山装う(やまよそう)』

春の季語が「山笑う」。春も秋も女神の季節。錦秋が山を染め上げる様は
あたかも女神がとりどりの襲ねの色目も鮮やかに装う様を連想させる。
紅葉は今ではカエデ属の植物をさす植物名だが、古来は「紅葉する(もみぢする)・もみいづ」という
動詞だった。万葉のころは「黄葉」の語も多く使われていた。
中国文化の影響が濃厚だった当時は黄金色に染まる葉の色のほうが愛でられていたようだ。

天智天皇中臣鎌足に「春山万花の艶と秋山千葉の彩」の優劣を問いかけた際、
額田王が秋の紅葉の方が勝るとする歌を詠んだ。

「林間に酒を暖めて紅葉を焚く 石上に詩を題して緑苔を掃う」 白楽天

紅葉を詠んだ句として、源氏物語平家物語はじめ多くの日本の作品にも
飲用される最もポピュラーな詩。
現代の紅葉狩りは、レジャーとしてあまりに人が多くて
このような興趣に今ひとつ欠けるのが残念なところ。

最も屋久島では照葉樹林がメインを占めており、また気候的にも
植物が美しく紅葉する条件が整いにくい。
秋に関しては情緒に欠ける島である。

  「もみぢばの ながれてとまる みなとには
           くれなゐふかき 浪や立つらむ」 二条后(藤原高子)

  「あきかぜに あへず散りぬる もみぢばの
           ゆくへさだめぬ 我ぞかなしき」  よみびとしらず

『神渡し』
 
 陰暦10月・神無月にふく西風。「神立つ風」とも呼ばれる。
出雲大社へ神々を送り出す風の意味。神々の移動には風が伴うと考えられていたのか。
季語としては冬の物だが、どこか晩秋の肌寒い風を感じる。
神も人も冬に向けてぬくもりを乞う季節。 

秋は殊更にその気持ちが強くなる。全ての物が冬という死の眠りの季節へ
収束していくゆえかも知れない。
古来、和歌にも秋に人生の暮れへの寂しさをかさねる歌は多い。